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大西ユカリ

こんな庶民的でソウルなライブ、

他にありまへんで!

アルバム発表記念ツアーのチラシ

通天閣の1階入り口付近に貼られているポスター

ライブが始まるの様子。パイプ椅子に座ってます

 

 

■通天閣の「聖地」で、ユカリ節を堪能

 

 大西ユカリが“聖地”と読んでいる「通天閣」の歌謡劇場で毎月最終水曜日に行われているライブショーに初めて行く。
 いい席を確保するために、開場1時間以上前からすでに10名以上の人たちが並んでいた。雰囲気は、なんか変。ヤンキー風のファッションのおばちゃんや、丸刈りサングラスの派手な兄ちゃん、オタクの雰囲気を漂わせているブルゾン姿の中年のおっちゃん、水商売風の派手なスーツとドレスで固めたカップルなど、フツーじゃない。公演場所が新世界だからなのか、歌う人が大西ユカリだからなのか、分からない。

 地下1階に降りていくと、殺風景な白い空間にパイプ椅子が並んでいる。中央後方に座り、大西ユカリの登場を待つ。やがてアロージャズオーケストラの前奏で雰囲気を盛り上げた後で、ユカリ嬢登場。今回は、宇崎竜童プロデュースのCD『やたら綺麗な満月』の発売記念ツアーも兼ねている。彼女も初披露とやらで、若干緊張ぎみだ。
 始まると、いつものユカリ節だ。ソウルやリズム&ブルースをベースに、宇崎、阿木ならではのメロディと歌詞が炸裂する。新曲オリジナルと従来のヒット曲を織り交ぜて歌い、喋りながらヒートアップしていく。
 アンコールでも3曲歌い、結局、2時間近くがあっという間に過ぎたのは、彼女のパフォーマンスの素晴らしさの証でもある。

 

大衆演劇の世界を現出

 

 ところで、さすが新世界!というべき光景に出くわして驚いたことが、2、3ある。

 まず、歌の途中でトイレにおっちゃん、おばちゃんが平気で席を立つことだ。それも1人や2人ではない。開演前に外で立って待っている間にすでに缶ビールをピシュプシュ、グビグビやっているのだから、そりゃあ行きたくもなるはずだ。でも普通は、それでも我慢するだろう。ところが、「関係ないもんね、そんなこと。行ってどことが悪いの?」ってな感じなのだ。

 次に、ライブの途中に、何やら後ろ側から喋り声が聞こえてくる。「ほんま、うるさいな」と振り返ってみても、それらしき人はいない。で、気を取り直してライブに集中しようとすると、再び、後ろで話し声が。で、はやり、いない。
 途中で、正体が分かった。実は、横の端に座っていた3人連れが喋っていた声が、ホール内を反響して後ろから聞こえてきたのだ。
 ユカリ嬢が言った。「ほんま、話声が気になって、普通なら出てもらうとこやけど、ここは気やすいところから、ええやろ」。さすが。通天閣で毎月ライブをしているだけあって、その柔軟な対応ぶりに感心する。

 さらに驚きの光景、第3弾。3分の1ほど進行した途中、ステージ上のユカリ嬢に客が花束を渡し始めた。その客の列の長いこと。しかも花束だけではない。お菓子、ワイン、特産品、手紙‥何でもありだ。しかもどの客とも顔なじみとあって、客とユカリ嬢は、丁々発止のやりとりをする。

 以上、3つの光景は、普通のライブでは、まずお目にかかれない。これは、そう、大衆演劇の世界だ。そう思えば、すべて合点がいく。さすが新世界。そして懐の深い大西ユカリに改めて感心した。(2010.6.1)

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