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堂島リバービエンナーレ2013

人類に欠かせない「水」を切り口に多彩にアプローチ

 

 

 

 7月19日の午後3時。翌20日から8月18日まで、堂島リバーフォーラムで開催される「堂島リバービエンナーレ2013」の記者会見&内覧会へ参加した。記者会見では、今回のアートディラクターである台湾人のルディ・ツェン氏が、今回の特徴を説明してくれた。

 テーマは「Little Water」(少しの水)。会場が堂島川の前であること、そして水の問題が、人類の生活に深く関わってくることに着目し、水を「天然資源」「洗浄と浄化」「儀式と宗教」「記憶と歴史」「国境と境界」「有形と無形」「人々、家庭、コミュニティをつなぐ水」といった多様な面からアプローチしている。

 興味深かったのは、水の分子組成の水素と酸素の間の4面の角度が104.4度あり、会場をセクションごとに小さく分ける仕切り壁の壁と壁の角度を90度よりも少し大きいものにしたという。何かこじつけのような気もしたが、内覧会で実際に会場を歩いたとき、この少しゆったり目の角度が絶妙な緩やかさと広がりを感じさせるのだった。

 

 

メグ・ウェブスター『容器に入った祝福のための水ー土井氏間川の水/清水』を説明するルディ・ツェン氏

 会場には世界的に活躍する内外の著名アーティスト28名が各自の切り口で39作品が展示されていた。内覧会では、先ほどのルディ・ツェン氏と、オペレーション・マネジャーの真田一貫氏の2人が、作家と作品への愛情を込めて丁寧に一点一点説明してくれた。

 八木良太の作品『Viny1』は、氷できたレコードに針を載せて回すと、実際に氷が溶けるまで音楽が流れるという作品。もう一つ、同じ作者の『机の下の海』は、机の上に設置されたヘッドフォンを耳に当て、立ったまま聞くと、海上波の音が聞こえ、斜眼でヘッドフォンの位置が机より低くなると、海中の音に変わる。どんな仕組みになっているのだろうか? 現代アートが一種のちゃぶ台返しだとすれば、八木氏の2作品は見事にその役割を果たしている。

 チームラボの『憑依する滝』は、デジタル処理された10mの高さの滝が流れる映像作品であり、見る者を圧倒する力がある。 インドネシア生まれのアディア・ノヴァリの3作品『インドネシア確認シリーズ』は、海に囲まれたインドネシアの島々が、水、ワックス、光によって形を変えていく様を通じて自国の有り様を問いかける。

 南アフリカのウィリアム・ケントリッジの『潮汐表』は、木炭で描かれたアニメーションであり、幼い頃に父親といった浜辺の記憶を再現したものであるが、木炭の独特のタッチが斬新で心に沁みる。韓国人のユェン・グァンミンの『消えゆく風景』は、家族と風景の現在と過去の記憶を3面スクリーンに映し出す。後ろに下がっていく映像には、思わず引き込まれる不思議な魅力がある。

 

 ここに取り上げたのは、ほんの一例である。大胆な発想と表現に驚いたり、作品に込められた想いに共感するなど見応え十分。また、台湾、中国、韓国、シンガポール、インドネシア、インドなど、アジアのアーティストが多いのも今回の特色であり、アジアンテイストが色濃く反映されているのも私には嬉しかった。(2013.07.26)

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