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明石浦漁港の左義長

 仕事の都合上、この1年間、なにかにつけて明石に足を運んでいる。明石で行われる祭りもその一つだ。1月13日、明石浦漁港で左義長が行われる。これは豊漁と漁業の安全を祈り、魚を供養する市内最大級の行事。高さ15メートルの青竹を1000本組み合わせた骨組みに張り子の鯛やタコなどの飾りを付けてたいまつ火をつける明石らしい行事だ。

 開始時刻は朝の8時からと早い。7日から激しい腰痛に悩まされていたが、これはぜひとも見たい!との野次馬根性の方が上回り、痛止薬を飲み、消炎剤を貼り、朝6時に家を出て、明石駅から明石浦の現場に着くと、すでに多くの人たちが、準備を整えていた。

 同じような行事に、どんど焼きがある。小正月に門松やしめ縄などを集めて焼く火祭りの行事のことだが、このどんど焼きと左義長は同じものである。地域によって言い方が違うだけだ。

 しかし左義長とは不思議な言葉だ。鳥の鷺(さぎ)を連想させる響きではないか。調べると、元は「三毬杖」と書く。平安時代の文書に見られる言葉で、3本の竹や棒を結わえて三脚を組み立て、そこで食物を調理したそうだ。これを左義長と書き換えたため、元の意味が分かりにくくなったというわけだ。

 さて、定刻の8時になると、業業関係者が見守る中、神主が祝詞をあげたうえで、ひを付けた。頂上辺りからパチパチと音を上げながら火炎と煙があがり始める。炎を見上げながら、振る舞い酒を飲む。旨い! 燃え尽きると、周囲の地面に黒い灰が広がっている。私は酒を飲み終わり帰ろうとすると、親子連れが私が持っていた空の紙コップをくれと言う。渡すと、コップに黒い灰を入れ始めた。「それ、どうするんですか?」と聞くと、魔除けのために家の門に置くという。なるほど。感心しながらJR明石駅へと歩く。

 

 

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