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スポーツクラブの未来形

  神戸レガッタ&アスレチッククラブ

 

 

 

 

夜間照明に浮かぶグランドを眺めていた

 

 友人たちと定期的な会合を開いている。幹事は持ち回りだ。その役が僕に回ってきた。とっさに思いついたのが、「神戸レガッタ&アスレチッククラブ(KR&AC)」である。夜、ポートライナーに乗って、三宮からポートアイランドへ帰る時、車中からオレンジ色の照明に照らされたグランドで、外国人たちがラグビーやホッケー、テニスなどに興じている様を何度も見た。見るたびに不思議な感慨にとらわれた。周囲の薄闇からそこの空間だけが剥ぎ取られ、ぼんやりと発光しながら浮遊していた。

 

近代スポーツ発祥に貢献したクラブ

 

KR&ACが神戸居留地に隣接して設立されたのは、明治元年。だから135年以上の歴史を誇っている。クラブ名にレガッタの名前がついているのは、かつては神戸沖で、レガッタ競争も盛んに行われた名残である。そのほか、クリケット、サッカー、ホッケー、ゴルフ、ボクシング、テニス、ラグビー、バスケットボール、ソフトボール、バドミントン、ダーツ、ビリアードなど、あらゆるスポーツ活動が行われており、地元神戸っこにもスポーツを普及。日本における近代スポーツ発祥に大きく貢献したクラブである。

 

壁面には歴史を実感させる写真が

 

 磯上公園球技場のグランド、4面のテニスコートに隣接したクラブハウスには、子どもを遊ばせるプレイルームも揃っている。ハウス内部は、外観のシンプルさとは反対に、全体が木目調で、歴史を感じさせる重厚な雰囲気が漂っており、レストランが併設されている。
 階段の壁面には、明治時代に撮影されたと思われる設立以来のメンバーの勇姿やスポーツに打ち興じる様子を撮った写真が所狭しと貼られていて、これをみるだけでも十二分に歴史を実感できる。
 また2階には、宴会用のホール、図書館、バーなどがあり、メンバー同士、気軽に交流を楽しむことができる。壁面にはダーツスペースも設けられている。

 

スポーツクラブに、バーを設置せよ!

 

 これらの施設面でとくに羨ましく感じたのは、バーカウンターの存在である。残念ながら日本のスポーツクラブには、施設内にアルコールを提供する仕組みはほとんど備わってない。ヘルシー志向はいいけれど、汗を流した後は、喉が渇く。乾きは水でもいやせるが、私の喉は水では我慢ができない。黄金色の液体が、喉をツツーと通過して初めて満足感に浸ることができる。ほんのり気分が良くなったところで、顔見知りの人間と気軽に雑談におよぶというわけだ。そこから友情や愛情が芽生えることだってあるかも知れない。

 KR&ACは、日本の総合型スポーツクラブの50年後、100年後の姿を示唆しているのかもしれない。そんな未来形のクラブが、実は神戸市内のど真ん中で135年前から存在し続けていたとは、何とも不思議な話しである。(2010年5月25日)

ハロー、サイモン。元気かい?

 僕たちが神戸レガッタ&アスレチッククラブ(KR&A)でのーパーティを開催した時に世話をしてくれた支配人が、サイモン・トーマス君だった。
 彼とは、パーティの要領や料理の内容などについて二度ほど打合せをした。そこで雑談を交わし、互いにすっかりうち解けたものだ。何でもイギリスのリバプール出身で、世界を旅行している途中で日本に立ち寄り、すっかり日本が気にいったそうだ。KR&Aの支配人は、最近なったばかりで、いまKR&Aの歴史の本(もちろん英語版)を読んで勉強しているところだと言っていた。
 パーティ本番の日には、僕たちのメンバーに、勉強したてのKR&Aの歴史を講義してくれたり、壁面にある写真の説明してくれた。
 そして2010年5月某日、久しぶりにKR&Aを訪れ、受付の女性に、トーマス君のことを聞いたら、とっくに辞めたと言う。
 いまどこで、何をしているか分からないが、きっと元気だよね。世界は広いようで狭い。いつかどこかでの再開を願って!

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