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サントリーミュージアム[天保山]

「ポスター天国」

ポスターの歴史から

魅力や威力をあますことなく展示

 

■数百点のポスターを無料展示

 1994年に誕生したサントリーミュージアム[天保山]。その最後の企画「ポスター天国」が、2010年11月13日〜12月26日に開催されている。

 入口に過去16年間に開催された企画のチラシが貼られている。私が足を運んだ「憧れの船旅展」「ブッシュビンと4人のデザイナー」等のチラシもあった。

 そして中に入って驚いた。ロビーに所狭しとポスターが展示されている。展覧会ポスターや世界各地の珍ポスター、戦前戦後の日本ポスターなど約300点。しかもこれらはすべて無料で観ることができる。いよ、太っ腹!

 

■二部構成で、分かりやすく展示

 いよいよ中へ。第一部は、「名作で辿るポスターの魅力と変遷」。19世紀末から20世紀後半まで、ロートレックやカッサンドル、サヴィニャックなど、各時代の最も重要な作家、作品約130点が選ばれている。19世紀末、シェレによるスタイルの確立から、アール・ヌーヴォー期のロートレック、ミュシャによる飛躍を経て、アール・デコ期のカッサンドルによる変革、そして戦後から20世紀後半まで、時代、社会の中で、ポスターが輝いていた様をたどることができる。この中には、企画としてあたためながら実現に至らなかった戦争・プロパガンダ、サイケデリック・ロックなど、初公開も多数含まれている。

 そして第二部は、「ポスターを支える3つの要素ー絵、写真、文字」。

第1部で取り上げきれなかった、絵、写真、文字の分野で歴史に残る名品を生んだ作家たちが紹介されている。

 

■不特定多数を対象にした街の芸術

 ポスターとは、商品や展覧会などの告知・宣伝のためのものだが、ロートレックをはじめ、多くの有名画家も参加して描いている。一般的な絵画作品は、購入した特定顧客のための芸術だが、優れたポスター作品は、宣伝の思惑を超えて見る者の感性に影響を与える、通りを往く不特定多数のための芸術、通りの壁や貼られる街の芸術だといえよう。

 

■プロパガンダとしての威力

 この力を利用して、戦争・プロパガンダのためのポスターも一部紹介されていた。中国やベトナムなどへいくと、この種のポスターを街中でいまも見かけることがある。ポスターの題材は、戦争ではなく、もっぱら社会建設である。この種の主のポスターのスポンサーは、企業ではなく、もちろん政府である。

 そして改めて思うのは、多くの言葉を羅列するよりも、視覚にダイレクトに訴えるポスターの方が何十倍、何百倍も効力を発揮することだ。

 

 そういえば、日本が満州国を建設したときのポスターに大いに感心したことがある。日本人、中国人、満州人、●○人、●●人の子どもたちが、手を繋いで仲良く遊んでいる絵柄だった。満州建国の理想である「五族協和」が、分かりやすく描かれていた。実際は、協和でなく、支配者と非支配者の差別は歴然とあったにも関わらずに、実態を知らない日本人がこのポスターをみたら、信じ込んでしまうに違いない。(2011年3月22日)

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