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元町映画館

 

ハリウッドばかりじゃない!

もっと世界の映画を愉しもう

■まずは私の「元町映画館」体験から

 9月1日に西元町のオフィスに移転して以来、元町商店街を通るたびに気になり、チラシを手にとって見ていたのが、「元町映画館」だった。引っ越し後は何かと大変で、通常の仕事の他に、パソコンのメール設定、名刺づくり、看板のプレートづくり、コピー機の導入など、することが山ほどあり、なかなか片づかない(私が鈍くさいという理由もあるが)。

 そしてやっと落ち着いた10月19日、気になっていた元町映画館に入る。見たのは、チェコのヤン・シュヴァンクマイエル監督(東欧の人たちの名前は、長くて覚えにくい)の『悦楽共犯者』。監督も作品もまったくの初耳だ。奇想天外な映像とストーリーは魅力たっぷり。学生時代にみたルイス・ブニュエルや、ケネス・アンガーの作品などを懐かしく想い出しながら見ていた。66席ある客席はほぼ満席で、若い人も多く、ブラックユーモアたっぷりのシーンではあちこちで笑い声が‥。性的なシーンもあり、確かに万人向きの作品ではないかも知れないが、想像力を刺激してくれる愉しい作品だった。

 翌日、同じ監督の作品『サヴァイヴィングライフ』を鑑賞。シュールレアリストらしく“夢の分析”を、『悦楽共犯者』同様のタッチで見事に映像化してくれる。主人公が精神分析医にかかる部屋にはご丁寧にも、フロイトとユングの肖像写真が掛かっていて、お互いに殴りあったり、蹴りあったりする。

 予告編やチラシを見ても、見たくなる作品が山のようにあるではないか。昔はフランス映画やイタリア映画の名作をよく見たのに、最近はなぜアメリカ映画ばかりなんだと不思議に思っていたら、何のことはない、シネコンは宣伝費をかけたメジャーな作品しか上映しなかったからだ。だからいきおいアメリカのハリウッド映画が中心になる。その他の地域(ヨーロッパ、アジア、中南米、中近東等)の作品は、素晴らしくてもシネコンにかからず、こうしたアート系のミニシアターでしか上映されていないことを改めて確認した次第である。そして改めて元町映画館が、オフィスから徒歩5分のところにある幸せを感じたのだった。

 

■自分たちが見たい映画を上映したい

 元町映画館が誕生したのは、2010年8月のこと。「神戸の映画文化の灯火を消したくない」という思いから映画好きの神戸出身のお医者さんが、商店街にたつ小さなビルを買い取り、そこに神戸映画サークル協議会のメンバーが支援。少ない予算の中で、内装などこつこつ手作りで完成させた。従業員は、藤島順二支配人(49歳)と、映写技師2人。その他20人以上のボランティアによって運営されている。

 ちょうど1年少し経過したところだが、前を通ると10〜20名ほどの若者たちが次の上映を待っている姿をときどき見る。かなり順調ではないだろうか? 「たまたま人気のある作品だったからでしょう。もともとお客さんが入らないのは、最初から予測していましたから。でも徐々にですが常連客が増えつつあります」と藤島支配人。 日本の映画料金は、一般的に高いのでは? もっと安くして入場客を増やした方が得策では? という私の質問に対して、「料金は、物価から考えると高くないと思います。それに料金は関係ありません。安くしても入りません。ネット配信やTUTAYAレンタルでいくらでも安く見ることができる時代です。価格で勝負することはまずありません。それよりも、ここでないと見ることができない、イイ作品を上映したい」。

 講演やトークショーも同館の大きな特色だ。そのまま上映すると誤解を招きかねない作品に関しても、解説などを加える必要があると考えるからだ。 イイ映画でも上映されない作品は多い。そこで元町映画館では、新旧、邦洋、メジャー・インディーズ、ドキュメンタリーなど、何であれ自分たちが見たい映画、良いと思った作品を拾って上映する。いくら知名度が高くても嫌いな作品は上映したくない。これが基本姿勢だ。だから、たとえお客さんが1人や2人でも気持ちよく上映する。

 作品選びは、100社ほどあると思われる配給会社から売り込まれる中から選んでいく。ただし、アート系のミニシアターは神戸にいくつかあり、「うちは後発なので、他が選んだ残りの作品から選びます。だから全ての中から選べるわけではない」と説明する。 時には、自分たちで企画を立てて配給会社に依頼することもある。今回のヤン・シュヴァンクマイエル監督特集も自主企画である。「アート系の人気監督なので、新作の『サヴァイヴィングライフ』と一緒に、旧作も一緒に上映することに決めました」。 この仕事の手応えは、見てもらいたい作品を上映して、お客さんが来てくれたときであり、「やはり、すごく嬉しい」と表情が和む。

■単館系ならではの工夫がいっぱい!

 同館では、ファンを増やすために、様々な工夫をしている。その一つが上映スケジュールだ。従来のロードショー館、あるいはシネコンなら、一つの映画館で、同じ作品を続けて上映している。ところが、元町映画館のスケジュールをみると、まったく様相が異なる。例えば10月29日(土)をみると、午前11時〜午後9時20分の間に、『エンディングノート』『LIFE IN A DAY』『ミスター・ノーバディ』『見えないほど遠くの空を』『サヴァイヴィングライフ』の5本が上映される。見たい作品があれば、その上映時間を目がけて行かねばならない。 ある男性から、「いつ来ても見られるように、なぜ同じ作品を一日中やらないのか?」と聞かれた。当然のように、品数が多い方が好みの作品に出会えるチャンスは増える。だから一日中、同じ作品を上映するよりも、複数の作品を上映する方が、来館客数が増える、というのが答えだ。

 もう一つの工夫は、普通なら映画館の中におかれているはずのチラシ類を、外に数多くおいていることだ。だから前を通人が足をとめて手に取る。とくに映画好きの人なら100%立ち止まるだろう。潤沢な宣伝広告費を使ってPRしているメジャーな作品なら、ある程度どんな内容か分かるが、宣伝費をかけられない作品の内容を知るには、チラシに頼る他ない。だからできるだけ多くのチラシをおく。そのチラシから好みの作品を発見する。目利きの優れた藤島支配人が選択しているからハズレは少ないはずだ。さあ、いますぐ元町映画館に足を運ぼう。(2011.11.28)

 

 

 元町映画館

神戸市中央区元町通4丁目1-12

JR・阪神「元町駅」西口から西へ5分神戸高速鉄道「花隈駅」東口から3分。

TEL:078-366-2636

●上映作品とスケジュールは、コチラへ!http://www.motoei.com

<料金>当日一般1700円、学生・シニア1000円、神戸映画サークル会員1200円※毎週火曜日はレディデー(女性1000円)、毎週水曜日はメンズデー(男性1000円)、毎月1日は映画サービスデー(どたたでも1000円)

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