過去は変えられる
昨夜、元町映画館で見た、アレハンドロ・ホドルフスキー監督の『リアリティのダンス』に久々に圧倒された。140分だから2時間20分の長い作品だが、1時間ほどにしか感じないほど、その魔術的な映像に魅せられた。ホドルフスキーの少年時代をテーマにした自伝的作品なので、ストーリーは比較的分かりやすく、少年の目に映った家族と時代が描かれている。だがより重点が置かれているのは、少年に対して強権的に振る舞う共産党員である父の姿であり、父の放浪の果ての贖罪である。どこかで読んだのが、実際の両親は、映画で描かれた姿より遥かに魅力に欠けた人物であったようだ。つまり、彼は両親に対して過去を変えてまで決着させたい心のわだかまりを抱えて生きてきた。最後の場面では家族3人、故郷を離れるために船に乗っており、そこで家族和解を示唆していた。
映像美だけでなく、音楽も素晴らしい。すべての台詞をオペラのように歌う母親役の役者は、実際にオペラ歌手であり、女優であるとか。そして全編を通じてダンスを踊るような精気に満ちている。この映画が85歳の男によって作られてたとは驚くばかりであせる。少々カルト色を強めた『フェリーニのアマルコルド』とも言えるが、文句なく、傑作である。