旧乾家住宅
阪急御影駅から北東へ徒歩10分。閑静かつ豪華な住宅街の中で、素焼きのタイルの壁が続く、一際大きな邸宅が、旧乾家住宅である。ここは乾汽船株式会社を設立した乾新治氏の自宅として昭和11年に建てられたものだ。設計者は、あの渡邊節氏であり、同氏の住宅建築の代表作とも呼ばれており、昭和前期の阪神間モダニズムの象徴的な存在でもある。
そういえば、前回訪れた舞子ホテルも日下部汽船の迎賓館として、大正8年に建てられたものであり、当時の海運業界の隆盛ぶりがよくわかる。阪神間モダニズムは、これら海運業界に留まらず、灘の酒造業界をはじめ財を成した多くの実業家が私財を投じて学校、生協、美術館などをつくり、豊かで華やかな文化の花を開かせたのだった。